民藝 MINGEI
大阪 CoMoKU / 2023年8月18日
東京都目黒区にある日本民藝館の所蔵品を中心に、各地の民藝を展示している。民藝運動の立役者、柳宗悦による蒐集の回顧録も交えながら民藝の歴史を辿る。
民藝という概念の根幹をなすのが「用の美」というキーワードだ。民衆の生活に根ざしたデザインに宿る美しさこそが民藝の美であるという。展示品にあった竹の茶碗籠(Ⅱ-2-21)、燭台(Ⅱ-3-19)、芯切鋏(Ⅱ-3-21)などは、用途や制作方法がデザインに与える制約が大きい気がする。そういった「都合」に導かれて顔を覗かせる不意の美しさが心を打つ。高速道路の斜張橋を渡るとき、放射状に広がるケーブルが視界を流れて行く様子を美しいと感じることがある。これも似たような経験に位置づけられるだろうか。
柳らが民藝に価値を見いださなければ、本展示品の多くが失われていたかもしれないと考えると感慨深い。一方で、愛好あるいは保存の対象として蒐集されていくことが、取るに足らない雑器としての民藝本来のあり方に多少なりとも負の影響を与えてしまったのではないかとも思った。
会場内で再現されていた「モデルルーム展示(上写真)」は、柳宗悦をはじめとする民藝同人が考案した展示手法だ。各地から集めた民藝でコーディネートしたモデルルームを通して民藝の魅力を引き出すことを目的としている。確かに、民藝を暮らしに取り入れる愉しみを理解してもらうには格好の手段かもしれない。しかし、モデルルームに配置されている民藝は、その部屋の所有者たり得る人間の営みの中で生まれた品ではない。生活の「用」に応じて生みだされる美を評価しながら、モデルルームでは、民藝を元来の「用」の文脈から切り離すことを試みたわけを知りたいと感じた。